IWCシャフハウゼン ― エンジニアリングと精度を極めた物語

1868年、アメリカ人時計師でありエンジニアでもあったフロレンタイン・アリオスト・ジョーンズによって設立されたIWCシャフハウゼンは、スイスの時計製造技術と現代的な工学的アプローチを融合させることを目指して誕生しました。ジョーンズは、ライン川のほとりに位置するシャフハウゼンを拠点に選び、川の水力エネルギーを活用するとともに、すでに確立されていた機械工学の伝統を基盤としました。

20世紀を通じて、IWCは機能性と技術力に優れたタイムピースの基準となる存在へと成長しました。マニュファクチュールは、腕時計の普及と歩調を合わせるように、堅牢で高精度なムーブメントを開発。1930年代には早くも、過酷な環境下での使用を想定し、航海士、エンジニア、パイロットといったプロフェッショナルの要求に応える、視認性と信頼性に優れた時計を提供していました。

1950年代以降、IWCはパイロット・ウォッチ、インヂュニア、初期のポルトギーゼ・モデルといった象徴的なタイムピーシーズを通じて、「時計師=エンジニア」としてのアイデンティティを確立します。革新の精神に忠実であり続ける同ブランドは、耐磁機構の導入や、チタンなどの現代的素材の先駆的な採用によっても独自性を発揮しました。

インヂュニア:”時計師=エンジニア”というIWCの哲学

1955年に誕生したインヂュニアは、磁場にさらされる環境で働くエンジニアや科学者のためのツールウォッチとして設計されました。洗練されたインダストリアルデザイン、サテン仕上げのステンレススティール製ベゼル、そして高い視認性を誇るダイヤルが大きな特徴です。

時代とともに進化を遂げてきたインヂュニアは、1976年に時計史に名を刻む巨匠デザイナー、ジェラルド・ジェンタにより再解釈されます。彼の手によって誕生した「インヂュニア SL」は、技術的ヘリテージとモダンな美意識を融合させたモデルとして位置づけられました。ジェンタのビジョンはインヂュニアのアイデンティティを決定づけ、やがてラグジュアリー・スポーツウォッチのアイコンへと昇華させていきます。

幾度となく再解釈を重ねながら、インヂュニアはIWCが大切にしてきた「伝統」「性能」「モダニティ」の理想的なバランスを象徴する存在となりました。2025年の「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ」で発表された最新作も、そのレガシーを確かに受け継いでいます。
なかでも注目すべきは、堅牢なケースと質感豊かなブラックダイヤルを備えたブラックセラミックモデル。現代的でありながらエレガントなシルエットが、インヂュニアの進化を鮮やかに体現しています。

IWC ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー:スイス時計製造の卓越性を体現する一本

リファレンスIW505701は、IWCシャフハウゼンが誇る傑作であり、技術的卓越性と時計製造における革新性を称える賞「ジュネーブ・ウォッチ・グランプリ(GPHG)2024」において、最高賞である〈金の針賞(エギュイユ・ドール)〉を受賞しました。
本モデルは、複雑機構の頂点に位置づけられるタイムピースで、「セキュラー(世紀)パーペチュアルカレンダー」を搭載。西暦3999年まで一切の誤差なく作動するという、前例のない性能を誇ります。1700年、1800年、1900年などのうるう年として無効な年を自動的にスキップする革新的な機構を備え、数世紀にわたって比類なき精度を維持します。

特筆すべき革新のひとつが、IWC独自の「ダブルムーン™」ムーンフェイズ表示です。2枚のディスクを用いた機構により、北半球と南半球それぞれの月の満ち欠けを同時に表示。高い視認性と卓越した精度を両立し、その誤差は4,500万年でわずか1日という驚異的な正確さを実現しています。

文字盤には、7時と8時位置の間に配置された4桁の西暦表示窓をはじめ、曜日、月、日付表示を備えています。シースルー仕様のケースバックからは、自動巻きムーブメント「キャリバー82600」を鑑賞することができ、約7日間のパワーリザーブを誇ります。

IWCシャフハウゼン:生き続けるマニュファクチュール

IWCの歴史的本社の社屋は、アメリカ人時計師フロレンタイン・アリオスト・ジョーンズの指揮のもと、建築家G・マイヤーの設計により、1874年から1875年にかけて建設されました。ライン川沿岸という立地は決して偶然ではありません。川がもたらす水力エネルギーが機械製造の動力源となり、時計の品質に不可欠な、継続的かつ高精度な生産を可能にしたのです。
この再生可能エネルギーと地域に根ざした技術力の融合により、マニュファクチュールは急速な発展を遂げました。現在では歴史的建造物として指定されているこの建物は、1993年よりIWCミュージアムを併設し、ブランドの歴史において中心的な役割を担い続けています。

2012年、IWCはシャフハウゼン近郊に約20,000平方メートルの敷地を取得し、最新の生産拠点「マニュファクチュール・センター(Manufakturzentrum)」を建設しました。21か月にわたる工期を経て完成したこの象徴的な施設には、デザインから、チタン、セラミック、セラタニウム®といった先進素材によるケース製造、ムーブメントの組み立て、彫金、研磨、最終組み立てに至るまで、時計製造に関わるすべての工程が集約されています。

IWCの時計は、各分野の職人技が結集することで完成する「集合的なクラフツマンシップ」の結晶です。部品の手仕上げ、高度な複雑機構の製作、革新的素材の実装など、従業員一人ひとりが希少かつ高度な技能を習得しています。
伝統と革新の融合こそが、IWCシャフハウゼンを「生きたマニュファクチュール」とする所以であり、ブランドはそのヘリテージに忠実でありながら、時計製造の可能性を絶えず押し広げ続けています。