友情と情熱から生まれたメゾン

2009年、パテック フィリップでの40年にわたるキャリアの後、ローラン・フェリエは自身の時計製造に対するビジョンを実現することを決意しました。控えめで洗練され、かつ高度な技術を要するタイムピースを生み出したいという思いに突き動かされ、彼は自らの名を冠したメゾンを創設したのです。

この冒険は、長年の友人であり、かつてモーターレースを共に楽しんだ仲間でもあるフランソワ・セルヴァナンなしには実現し得ませんでした。二人はスピードへの情熱を共有しており、その絆は自然とこの新しいプロジェクトへと受け継がれ、セルヴァナンは惜しみない支援を寄せました。

さらに、ローラン・フェリエの息子も決定的な役割を果たしました。彼のムーブメント設計者としての専門知識がなければ、このブランドは存在していなかったかもしれません。フェリエ自身も「もし息子が銀行家だったら、この冒険に挑戦することはなかっただろう」とよく振り返っています。

メゾンを輝かせたきっかけ

ローラン・フェリエは、”ガレ クラシック トゥールビヨン ダブル スパイラル”によって、2010年のジュネーブ・ウォッチ・グランプリ(GPHG)でメンズウォッチ賞を受賞しました。この栄誉ある受賞がメゾンを国際的な舞台へと押し上げ、その作品に世界的な評価をもたらすとともに、今日まで続く名声の礎を築きました。

真の時計製造マニフェストともいえるこのタイムピースは、ブランドの本質を体現しています。丸みを帯びた極めてシンプルなフォルムのケースには、ダブルヘアスプリングを備えたトゥールビヨンという技術的偉業が秘められています。その結果、卓越した精度と時を超えた美学が融合しました。
2025年、メゾンは創業15周年を迎え、ジュネーブ・ウォッチ・デイズにて、その歴史に敬意を表した”クラシック トゥールビヨン”を発表しました。2019年モデルの精神を継承しつつ、プラチナ製ケースを採用したこの限定モデルはわずか5本のみ製作されます(写真参照)。時を超えて受け継がれるローラン・フェリエのスタイルの継続性を完璧に表現する、記念すべきアニバーサリー・モデルです。

クラシック・ムーン・シルバー

2024年、ローラン・フェリエは再びジュネーブ・ウォッチ・グランプリ(GPHG)で栄冠を手にしました。今回はカレンダー&アストロノミーウォッチ部門での受賞です。”クラシック・ムーン・シルバー”は、メゾンをこれまで特徴づけてきた美学を体現しています。

技術的にもこの作品は大きな節目を示しています。ブランド初となるムーンフェイズを年次カレンダーに組み込んだのです。ムーンフェイズはムラーノ・アベンチュリングラスで、手描きによる彩色を施し、スーパールミノバで満たした後に焼成。その後、クレーターを浮かび上がらせるように彫刻が施され、最後に透明感のあるブルーエナメルで全面を覆っています。

サファイアクリスタルのシースルーバックから覗くのは、約80時間のパワーリザーブを備え、毎時2万1600振動で駆動するキャリバーLF 126.02。その仕上げは卓越しており、ロジウム仕上げのコート・ド・ジュネーブで精緻に装飾されたブリッジ、ペルラージュ仕上げのメインプレート、手作業によるアングラージュ(面取り)、カウンターシンクネジ、さらに「バッシネ」と呼ばれる長刃式ラチェット爪が、手作業で丁寧に鏡面仕上げされています。

ローラン・フェリエにおける装飾芸術

装飾は真のシグネチャーです。目に見える部品も、隠れた部品もすべて、ジュネーブ高級時計製造の最も純粋な伝統に則り、徹底的なこだわりをもって仕上げられています。その目的は二つ――ムーブメントの美しさを引き立てること、そして完璧な仕上げを保証することです。

その中でも特に重要な位置を占めるのがアングラージュ(面取り仕上げ) です。完全に手作業で行われるこの技法は、部品のエッジを面取りして磨き上げることで、比類ない光の輝きと柔らかさを与えます。それは忍耐と精密さを要する作業であり、非常に高度な職人技です。

アングラージュと並んで、他の象徴的な装飾技法も重要な役割を果たしています。メインプレートに繊細な円形模様を施すペルラージュ、そしてブリッジを美しく飾る波状模様のコート・ド・ジュネーブ。これら伝統的な装飾仕上げが、それぞれのムーブメントを真の芸術作品へと昇華させるのです。